LOT.073

児島 善三郎〈1893-1962〉
南仏風景

  • 作品カテゴリ: メイン洋画
  • 60.4×72.6cm
  • キャンバス・油彩・額装
  • 左下にサイン、年記 / 1926年
    / 児島善三郎作品鑑定書付
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  • 予想落札価格: ¥1,500,000~¥2,500,000

〈作品について〉


 本作《南仏風景》は1926 年、児島善三郎が南フランス滞在中に制作した作品である。強烈な陽光に照らされた白壁の家屋と澄み渡る青空、深い影を落とす樹木が鮮やかに描き出され、力強い筆致と明快な色彩によって自然光のまばゆさが見事に捉えられている。児島はこの経験を通じて、西洋美術の単なる模倣ではなく、日本人の感性に根ざした独自の洋画を確立する必要性を強く意識するようになった。
 渡仏時代は、後年の画風の基盤を築いた彼にとって極めて重要な時期であり、本作もその代表的成果のひとつに数えられる。とりわけ本作は、若き児島が父の訃報に接しながらも異郷の地で筆を執り続けたという背景を持ち、彼の画業を語るうえで貴重な一枚といえよう。

 児島善三郎(1893–1962)は福岡市に生まれ、二科展で頭角を現したのち、1925 年から約3 年間パリを拠点に滞欧した。帰国後は二科会を経て1930 年に独立美術協会を創設し、その中心的存在として活躍した。彼は「西洋美術の模倣ではない日本的油絵とは何か」を常に問い続け、日本の伝統美術に学びつつ、装飾的かつ大胆な表現と鮮やかな色彩によって独自の画風を築き上げた。