金・銀・銅–輝きときらめきの美術

2018/09/07

 つい先日まで、アジア大会2018ジャカルタが開催されました。さまざまな競技で日本選手団が大活躍しました。2年後に迫った東京2020オリンピック・パラリンピックへの期待も高まります。
 さて、世界中の大会で1・2・3位の選手には金銀銅メダルが贈られますが、これが定着したのは近代五輪(1896年~)からだそうです。なぜメダルが金銀銅に決まったかというと、まずこの3金属は腐食しにくい特徴をもちます。また地上での存在比からみると、金は銀の100倍貴重で、銀は銅の100倍貴重な存在のため、金銀銅の順番に決まるのも自然なことであったと思われます。

 美しく輝く金銀銅を、人類は古くより珍重し、美術工芸にも用いられました。
 金は紀元前3000年から使われ始め、エジプト・ツタンカーメン王の黄金のマスクなど、世界各国の装飾品に利用されていました。一方、他にはない輝きを持つ金は美術工芸でも重用され、ヨーロッパでは古くはビザンツ美術のモザイクや、近代ではクリムトの「黄金の時代」の作品があります。日本でも、16・17世紀の狩野派による障壁画や、尾形光琳など琳派など、金箔を使った絢爛豪華な絵画があります。工芸分野では、たとえば漆芸の蒔絵などに金が使われ、漆黒と金の艶やかな対比は平安時代から親しまれてきました。
 銀も紀元前3000年頃から利用されたと考えられ、古代エジプトでは銀は金よりも価値が高かった時期があり、金製品に銀メッキを施した宝飾品が存在します。また、ヨーロッパでは中世より銀食器として親しまれており、銀は「毒に触れると曇る」と言われたため、毒殺を防ぐために王族が使い始めたといわれています。日本では、銀もまた美術工芸の材料になり、尾形光琳≪高白梅図屏風≫などのように金と銀を併用して、異なる輝きの対比が楽しまれています。
 銅は紀元前9000年前から利用され始め、鉄が台頭するまでの数千年間、文明の発展にかかせない金属でした。銅は精錬が容易で、加工性・耐久性にも優れるため、装飾品や鏡など日用品から水道管などのインフラまで、多様な用途にみられます。とくに錫との合金である青銅は、錫の割合によって赤銅色から黄金色、白銀色に金属の色が変わる性質があります。時間が経つと、青銅の表面が酸化して緑青色になってしまいますが、古代では金銀に準じる金属ともされ、仏像やブロンズ像、中国古代の青銅器などのさまざまな美術品にも利用されました。

 古くから特別視される存在であり、他にはない輝きをもつこの3種の金属は、偉大な功績を残した人物を称えるのにふさわしいものであるでしょう。そして数千年経っても親しまれ後世に残すことができるという点も、美術品が証明してくれています。

「今回の台風・地震災害のお見舞い申し上げます」
 このたびの平成30年台風21号、および北海道胆振東部地震により被害にあわれた方やそのご家族、関係者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。一日も早い復旧、復興を心よりお祈り申し上げます。


〈次回オークションのお報せ〉
秋季特別オークション
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