芸術写真の歴史 Ⅱ

2018/07/24 出品作品のご紹介

 今週のコラムは先週に引き続き、写真芸術の歴史について20世紀モダニズム以降から触れていきます。

 20世紀初頭、アメリカでストレートフォトグラフィ、ヨーロッパで絵画の前衛芸術と連動した多様な写真表現が起こりましたが、その後さらに新たな写真運動が生まれます。1920年頃から印刷技術の発展により、写真を掲載した雑誌や広告などのマスメディアが急速に広まりました。人々は写真を見ることによってニュースや流行を理解するようになり、報道写真やファッション写真といった写真分野が注目されるようになります。

 この頃、ライカなどの小型カメラが登場し、その持ち運びやすさや優れた機動性は現場の一瞬の場面を捉えなければならない報道写真にうってつけで、ロバート・キャパ(lot.162~166)など多くのフォト・ジャーナリストが用いました。また小型カメラは一般にも広がったため、人々はカメラを特別意識しなくなり、人々の自然な姿を捉えたスナップ写真もこの頃から隆盛して、アンリ・カルティエ・ブレッソン(lot.156)などが活躍します。

 広告の分野では見る者にインパクトを与え、消費を刺激する写真を目指し、前衛芸術の影響を受けたりしながら独自性を高めていきます。とくにファッション写真は女性の社会における変化と連動して大きく発展し、第二次大戦前後よりアービング・ペン(lot.155)やヘルムート・ニュートン(lot.157)などが活躍しました。

 第二次大戦以降は、写真表現はさらに多様化する時代へとなります。ユーサフ・カーシュ(lot.158~161)は多くの著名人のポートレートを手がけ、ビル・ブランド(lot.138,139)はシュルレアリスム的な性格を帯びた独自の作風を貫き、ウィン・バロック(lot.140~144)はストレートフォトグラフィを展開させた姿勢でアメリカの大自然を撮影しました。また一方で、砂丘シリーズで有名な植田正治(lot.197~213)のように日本人作家も海外で評価されるようになります。

 そして1980年代になるとポスト・モダニズムの時代に入り、作家は写真技術や作品の完成度だけを追求するのでなく、哲学的な考察や社会批評要素など独自のコンセプトを基盤として作品を制作するようになります。日本人作家としては、森山大道(lot.173~181)や杉本博司(lot.182~194)などが活躍し、国際的に高い評価を得ています。

 今週土曜日はいよいよ第53回オークションが開催されます。今回オークションには2週にわたってご紹介いたしました著名な写真家の作品が多く出品されるほか、絵画では藤田嗣治やルオー、ルノワール、ビュッフェなどが揃い、また浮世絵や版画、陶磁器や中国美術が出品されます。

 ぜひ、皆様のご来場をお待ちしております。

〈次回オークションのお報せ〉

アイアート第53回オークション
開催日: 7月28日(土)11:00~
下見会: 7月25日(水)10:00-18:00
     7月26日(木)10:00-18:00
     7月27日(金)10:00-15:00
会場: 東京都港区新橋5-14-10 新橋スクエアビル3F

どなたでも無料で参加できる美術品公開オークションになります。ご来場をお待ちしております。